「素直になれなくて」
 
その日は朝から凄く晴れた日であった。珍しく出撃も無く、平和な日曜の昼下がり。
 
そんな日でも、約1名不満を募らせている者がいた。
 
その名は 芝村舞。言わずと知れた芝村の末姫である。
 
彼女がご機嫌斜めなのには理由があった。
 
それは丁度2週間前のこと・・
 
3月14日。日曜日。舞は特にすることもなかったので図書館へ行こうと考えていた。
 
校門を通り過ぎようとしたところ、速水厚志が話しかけてきた。
 
 
「おはよう、芝村!!。」
 
「相変わらずだな、そなたは。芝村に挨拶は無いと何度言ったら分かるのだ。」
 
「うーん、やっぱ朝の挨拶って大事だと思ってね。あれ?どっか行くの?」
 
「うむ、ちょっと図書館に調べものをしにな。そなたは訓練でもするのか?。」
 
「うーん、とりあえず学校に来てみたけどすることないしどうしようかと思っていたところなんだ。あっ、そうだ。僕も一緒に行っていい?。」
 
「ななな、なんだと!!ついてくるのか?。」
 
「うん、ダメ・・かな?。」
 
「いいいや、そそそそんなことはない。わわわかったこれもデエトと言うものなのだろう。ついてくるがいい・・。」
 
「やった!!、それじゃ行こう!!」
 
「こここら引っ張るな、袖が伸びる!!。」
 
 
それから五時間ほど話しただろうか・・滅茶苦茶緊張してしまったので詳しくは覚えてないのだが・・。
 
何故こんな気分になるのだろう?。うーむ、私はどうかしてしまったのだろうか・・。
父はこんなことまで教えてはくれなかった・・。
 
私はどうすればいい・・どうすれば・・。
 
 
私は、厚志のことは好き・・だがどういう好きなのか自分でもよく分からん。
 
ただあやつが側にいてくれるだけで、何故だか不思議に落ち着く自分がいる・・。
 
あやつとて結構好かれる男だ。
 
私などただ同じパイロットで同じ機体に乗ってるよしみで優しくしてくれるだけなのかもしれん・・。
 
私の心にあやつがいても、あやつの心の中に私は・・いないかもしれん。
 
うーむ、これが「恋」というものなのか?。父よ・・。
 
 
翌日、舞は速水に詰め寄った。
 
 
「厚志、話がある。ちょっといいか?」
 
「何?」
 
「ううむ、ここでは誰が聞いてるか分からんし、校舎裏へ行くとしよう。」
 
「う、うん。そうしようか。」
 
 
 
「で、どうしたのさ。こんなところまで呼び出して。」
 
「そその・・。厚志、短刀直入に聞く。そなたの好きな人を教えて欲しいのだ。」
 
「もちろん、舞に決まってるじゃない。」
 
「ううむ、そうか。」
 
「どうしたの?。急にそんなこと聞くなんて。」
 
「いいや、気にするな・・。こちらのことだ。」
 
 
「決めたぞ!。私はそなたをカダヤにする!!。」
 
「えっ?。カダヤって何さ?」
 
「ううううるさい、そなたは私のカダヤだ。これからはカダヤらしくせよ。いいな?」
 
「うーん、よく分からないけど舞も僕が大好きってことなんだね?」
 
「ばばばかもの!!、声が大きいぞ!!。まったくそなたには恥じらいというものがないのか?。」
 
「うーん、だって僕は舞が好きなのは事実だし。今更隠す理由なんてないでしょ?。」
 
「ううむ、それはそうだが・・私は・・こういうことに慣れておらん・・」
 
「ふふ、舞はほんとに可愛いよね。」
 
「ここら、今度そういうことを人前で言ったらただではすまさんぞ!!。」
 
「あはは、怒ってる舞も可愛い♪。」
 そう言うと、速水は教室に向かって走り出した。
 
 
 
幸せな日々・・どうか永遠にとは行かなくてもせめて10年くらい続けばいいのに・・
 
舞はそんなことを思いながら、速水を追いかけた・・。
 
               〜終〜