「恋の一時間は孤独の千年」
 
 
 
「久しぶりです。・・少し変わりましたか。」
「貴方は相変わらずね。」
 
 
配属先の名簿を見て、私はドキッとした。まさか貴方がいる所に戻ってくるなんて・・。
あの人は忘れてしまった・・、いえ、忘れようと努力してるのは私の方ね。
あの人はそこまで器用な人じゃないわ。
 
 
「それでは加藤さん、先に上がります。お疲れ様。」
 
あの人の声が聞こえた。忘れもしないあの声。
 
そう、あの人は今ではこの小隊の司令官。私はその補佐役となる、整備主任にして副司令
でも私はあの人の全てが懐かしく、そして憎らしくさえ思えた。
あの人は己の為に私を捨てたわ、そう・・自分のために・・。
 
 
「素・・、いや原主任。今仕事上がりですか。どうです、一緒に帰りませんか。」
「どういう風の吹き回し?。貴方から誘ってくるなんて。貴方は私のことなんかどうとも思ってないでしょうに。」
「ははは、これは手厳しい。それにしても・・こうして話すのも随分と久しぶりですね。元気そうで良かった・・。」
「何よ、そうやって優しい振りでもすれば私が許すとでも思ってるのかしら。
元気そうで安心したですって?、はっこっちにきてから不機嫌なことばかりだわ。
きっと貴方の顔を見た所為ね。」
「随分と・・嫌われたもんですね。でも許してもらおうなんて思っていないですよ。
私が貴方にしたことは一生懸けても拭いきれることではないですから。」
「喋らないで。貴方のその声嫌いよ。」
「そうでしたか。すみません。」
「喋らないでって言ってるでしょ!」
「・・髪短くしたんですね。似合っていますよ。」
「図に乗らないで!!。私が髪を切ったからどうだって言うの?。貴方のせいだとでも
思うわけ?。ただそういう気分だっただけよ!!。」
 
 
 
気がつけば私は走り出していた。泣き顔をあの人には見られたくなかったかもしれない。
一人部屋に帰ってすぐ玄関のドアにもたれかかって泣き崩れた。
 
 
泣けば全てが忘れられるの?。それともあの人を取り戻そうとまた無駄な時間を過ごすの?。そんなのどちらもイヤ!。
もう私に構わないで。もう私は昔の私じゃないわ。
もう寂しくなんかない。しっかり今をみつめて一人で生きていくわ。
 
 
貴方の為に泣いた日々。
貴方は私を混乱させてばかり。1度だって本心を見せてはくれなかった。
でももう関係ないわ。全てここに置いていくわ。そう生まれ変わるのよ。
 
不思議なものね、私がこれだけ苦労して忘れようとしても貴方はは変わらないまま。
嫌いだと思えば思うほど、貴方が忘れられなくて、苦しい・・。
貴方に優しくされるたび、ほんとは嬉しいはずなのに、心のどこかで貴方を嫌う私がいる。
 
 
私は、どうすればいいの?・・。