愛と笑いの狭間で
戦況は拮抗していた。ただ唯一救いなのは大規模な幻獣の発生がないことであろうか。
そんなとある日曜日。
久しぶりに取れた休日ということで、石津萌は恋人である、来須銀河とデートすることに。
待ち合わせ場所は、尚敬高校校門前に午前9時。

石津は、一時間早く校門前で、今か今かと、恋人を待っていた。



・・・一時間後。

「・・・遅いわ。」
ふと時計に目をやると、時間は9時をもうすぐ回るところであった。
(・・すっぽか・・された・・?)
ふとそんなことが頭をよぎっていくが、来須がそんなことをするわけはないと
思い直し、もう少し待ってみることにした。


・・・さらに10分後。


石津は、それらしき人影が校門に向かって走ってくるのを見て安堵した。
(・・・わた・・しの・・考え過ぎ・・のよう・・ね)


はっきりとその姿を確認できる所まで来たとき、石津は来須の姿の異変に気がついた

「・・・どう・・した・・の?、その傷・・」
そう、来須の額と腕、そして膝から、軽く出血の痕が見えたのだ。
彼ご自慢の帽子も土汚れがしている。
「・・いや・・何でもない。」

そういって帽子を被って表情を隠す来須。

「・・ここに・・来る前に・・誰かに・・会った・・?。」


全てを見抜いたかのような、石津の発言に、来須はついに観念した。


「・・・げ・・・幻獣に・・・。」
小声でそうつぶやく来須。


「とにかく・・・遅れてすまん・・・!。」

いきなり土下座をする来須。
かなり独特なその風景に擦れ違う人の視線を一身に集めている。

「そ・・それはいいから・・・どこの地区の幻獣と戦争してきたの・・・?!」


「・・だってミノタウロスが・・ミノ助のあん畜生があ!!。」


これはそんな2人の日曜日のお話。



とりあえず、視線を避けるようにして、新市街へ出てきた2人。
ふと気がつけば、とあるCDショップ前に来ていた。

「・・あ!、ねぇ銀河、CD見ていって・・いい?。」

「・・ああ。だが・・。」

来須はふと店の入口のセンサーを指差し、
「・・あのセンサーに見つかったら凄いことになる・・。」

「酷いわ、銀河・・わた・・し万引きなんか・・。」

「万引き・・?、何を言っているんだ萌・・。」


「あれは・・藁人形センサーだ。藁人形嫌いの店長が、藁人形を持ち歩く人々
を一人残らず抹殺する為に・・・。」


来須の話を聞いて石津は青ざめた顔になった。

「・・・萌?。」

石津はすぐ踵を返し、走り始めた。
「ま・・また今度・・にしよう!、銀河!。」

「・・萌・・まさかっ・・!!。」



そう、これはこんな2人の日曜日・・・。