「この想いを貴方へ」
 
時は2001年9月19日。
くしくも休戦期間に入り、人類にとってはつかの間の平和がもたらされていた頃・・。
 
 
小隊一不幸少女と称される田辺真紀は、愛しの遠坂圭吾の誕生日の為に日夜バイト代を
貯めていた。
 
今日はそのバイト代が下りる日。
田辺にとって、努力が報われる日である。
 
 
バイト先で給料を手にした田辺はまっさきに新市街へ走り、プレゼント選びに急ごうとした。
 
新市街で田辺は一通りウインドーを眺めながら、イマイチこれと思える物に出会えず、
途方に暮れていた。
ちょうどその時のことである・・
 
 
新市街をとぼとぼ歩いていると、一人の老婆に出会った。
その老婆は何やら地図を見ながら悩んでいた様子である。
 
「どうかされたんですか?」
田辺はどうにも無視することができず、その老婆に声を掛けた。
「いえねえ・・今町公園に行きたいのだけれど・・。あんまり一人で出かけたことなくてねえ。道に迷ってしまったのですよ・・。」
「それなら私が案内しますよ、お婆さん。」
田辺はそう優しく微笑んで言った。
「その場所ならよく私も行きますし、ちょうど考えたいこともあったんです。
さあ行きましょう。」
「そうですか・・?、すみませんねえ・・」
 
 
それから数分後、田辺は老婆と公園で会話をした頃にはすっかり日も暮れていた。
 
「はわわ、どうしましょう・・。何も用意出来てない・・」
一人そんなことを思いながら、田辺は頭を悩ませた。
「あっ、そうだわ!、これがあるじゃない!!。」
田辺は何かを思いついたのか、いそいそと準備に取りかかった。
 
それから数時間後・・。
遠坂宅にて。
 
 
「どちら様ですか?。」
「あ、あの私です、遠坂さん・・。」
「田辺さん?、ああ、ちょっと待ってください、今門を開けますので。そこに居てください。」
「ははは、はい!」
田辺は緊張していた。
自分でも赤面してしまうほどのプレゼントを今、しようとしているのだから。
 
 
「こここ、こんばんわ・・」
「どうしたんです?。こんな遅くに・・。」
「ああ、あの!、今日は遠坂さんの誕生日でしたから・・それで私プレゼント用意しようと今日の今まで頑張って探してたんです。ででも貴方に合うものがなかなか見つからなくて・・」
「・・ああ、そうでしたか。僕は貴方のその気持ちだけで充分嬉しいですよ?」
「で、でも!!、遠坂さんには色々してもらっているし・・少しでもお返しがしたくて・・・それでその・・。」
「はい?。」
「あああ、あの!!、私を貰ってください!」
その言葉を聞いた遠坂は一瞬驚きの表情を見せたが、すぐに微笑んだ。
「・・ええ、喜んで。」
結局その日は時間も遅いということで、田辺は遠坂の家に泊まることになりはしたが、
その日の思い出は田辺にとっても遠坂にとっても、忘れらないことであったことは言うまでもない・・。