「それは気まぐれな夢」
 
滝川陽平。
5121小隊所属。階級は戦士。
夢はエースパイロット!!のはずが・・閉所恐怖症なのと戦車技能を持ち合わせて居ない為に現在無職の身。
そんなもんだから小隊メンバーにはほとんど相手にされず、唯一の心の拠り所は 味のれんのコロッケとブータのみとなっていた。
 
相変わらず今日も気持ちだけは「戦車兵がんばっか」な状態・・・。
しかし、こんな生活を彼だって好きでやってるはずもなく戦車技能を取ろうと彼なりに努力はしているのである。努力だけは・・・。
 
そんなある日のことである。
「滝川君、ちょっとよろしいですか。」
そう声をかけたのは遠坂だった。
「あんだよ、お前が俺に話だなんてめずらしいじゃん。どうした?」
「実は貴方の夢であるパイロットに簡単に成れる良い方法がありましてね。どうです、試してみますか?。」
「えーー!!どうせ変な薬とか飲ませるんだろう?。俺は狩谷の二の舞はふまねえぞ。」
「あの時は私の調合ミスでした。今回はちょっと違うんですよ。」
「どういうことだ?。」
「つまりですね、今回はこれを使うんです。」
そう言うと遠坂は1枚のCDを懐から取り出した。
「これは?。」
「仮想空間での戦闘シュミレーションソフトです。これを使うと戦車技能、狙撃技能、白兵技能が一辺に取れるんです。しかもレベルは3で。
どうです素晴らしいでしょう?。」
「へ、へええ・・凄いな。でも副作用とかあるんじゃ無いだろうな?。」
「そんな!!。これは我が遠坂コンツェルンが今開発中の新作ですよ。そんなことを言うならこの話は無かったことに・・・。」
「お、おい待ってくれよ。誰も使わないとは言ってねえだろ!!。わかった、やるよ。それ、具体的にはどうすればいいんだ?。」
「ふふ、そうこなくては。では整備員詰所に行きましょうか。まずこれを貴方の結晶に接続する必要がありますからね。」
 
 
滝川はパソコンの前に座った。普段なら絶対使おうとは思わない場所なのでちょっと緊張している。
「では、始めますよ。いいですか?。」
「俺はいつでもオッケーだぜ。」
「ではプログラムを開始します。このプログラムは一切の行動が終わるまで最低でも10時間は拘束されますからね。では健闘を!!。」
 
 
滝川は仮想空間の中に入った。周りは閑散としたビル郡のようだ。
「なんだか変な所だな。さて武器とかはどうすればいいのかな。」
周りを見渡すとアサルトライフルと超高度カトラス、弾薬の入った袋が置いてあるではないか。
「へへ、お誂え向きだな。これを使えばいいんだな。」
滝川が武器を取り、装備していると空中に文字が浮かび上がった。
「勝利条件:敵の全滅。敗北条件:プレイヤーの戦死」
「ふーん、随分とこってるな。まあそう来なくちゃやる気がでねえけどな。」
滝川は装備を済ませ、素早くビルの影に隠れた。
「さーってどこから来るんだ・・・。」
そうこうしているうちに、敵が現れた。敵の数は・・・40!!。
「マジかよ!!、めっちゃ多いぞ。」
滝川は怖くなったがここで逃げたらもうどうしようもないと気がつき、射撃の準備をした。
とりあえず前衛にいる目の前の敵にめがけて放った。攻撃はヒットはしたものの・・。
「やべえ、なんかまだ生きてるみてえ・・。どういうことだ?。」
滝川が疑問に思っていると天井にまた文字が現れた。
「ちなみにここのステージはゾンビが徘徊している。注意されたし。」
「・・・・・・。」しばし無言。
「ちきしょう!!。こうなったらヤケだ。やってやるぜーーー!!。」
滝川は全力射撃をかました。その攻撃でまわりのゾンビは消滅したが、まだまだ数は多い。
「こうなったら来須先輩に習ったあの技で!!。行くぞ、移動射撃!!。」
走りながら射撃をかましつつ、超高度カトラスで残った敵を叩きながら進んで行く滝川。
そのうち、ステージも終わりに近ずき、親玉が姿を現した。
「なんだあれは!!。」
滝川の前に現れたのはゾンビの中でも最強とうたわれるグールだった。体長はミノタウルス並で異様な臭いを放っている。
ちょうどその時弾薬も底をつき、あとは肉弾戦のみとなった。
「へへ、流石に白兵3はきついメニューだな。行くぞーー!!。」
滝川は超高度カトラス片手にグールに切りかかった。しかし・・・。
「グルルルルーー!!。」
軽く第一撃をいなされ、強烈なパンチを貰った!!。
「ぐほおーー!!。」
滝川はその一撃で危うく意識が遠のきそうになったが気合で持ちこたえた。
衝撃で壁にぶち当たり、その中にはなんと・・・。
「あれは、伝説の巨人バンバンジーだ!!。よしこれで勝てる!!。」
滝川は素早くバンバンジーに乗り込んだ。
「よし、バンバンジー。スーパー中華パンチだ!!。」
そう滝川が叫ぶとバンバンジーは猛烈な勢いで駆け出し、猛烈なボディブローを決めた!!。
「今度は、ロケットキックだ。バンバンジー!!。」
バンバンジーは凄い勢いで空中に飛び上がり、その反動でキックをかました!!。
「よし、敵は虫の息だぞ!!バンバンジー。とどめは必殺バンバンジーブレードで決めるぞ。」
そう滝川が叫ぶとバンバンジーの胸の辺りから巨大な剣が姿を現した。
「行くぞ、永遠のーー!!バンバンジーブレードーーー!!!。」
その声と同時にバンバンジーは剣を振りかざし、物凄い一撃でグールを葬り去った。
「よっしゃーーーー!!。やったぜ、バンバンジー!!。」
「へへ、やっぱ強いぜバンバンジーは・・。ってここはどこだ。」
滝川が辺りを見渡すと、そこは仮想空間でもなければ整備員詰所でも無かった。
周りに居るのは1組の面々と、怒り頂点に達した本田の姿だった・・。
「滝川、俺の授業で眠るたあ、いい度胸してんなあ、おい!!。」
「へっ、俺は今まで戦車技能を取ってたんですが・・。」
「ばーか、夢でも見てたんだろ。お前はずっとそこにいたよ。しかしよっぽど俺の補習授業が受けたいらしく平然とイビキかいて寝てたけどな!!。」
「えーーーーーー!!。」
 
 
 
その後、滝川が2時間ほどこっぴどく本田先生に叱られたのは言うまでも無い。
しかし、あの夢が効いたのか、彼はすぐに戦車技能を取ることに成功した。ほんとにあの出来事が夢だったのかは定かではないが・・・。
 
〜終〜
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